過去と現在。
現在と未来。
未来と過去。

ねぇ。
過去は縛るものじゃないんだよ。
今を生きてみようよ。
これからは未来を信じてみない?

いつか過去だって大事な時だったのだと思える日は来るよ、きっと。





崩壊していくメサイア。
フリーダムの中から眺める僕と彼。

……彼は何を思いながら眺めているのだろう?








気付いたら彼を抱きしめていた。
まるで小さな子供のように泣き続けていた彼を放っておくことなんて出来なくて。

「……キラ・ヤマト。貴方にレイを頼んでもいいかしら?」
後ろから声がした。
振り向くとそこにはまるで母親のような表情で僕たちを見ている女性、グラディス艦長がいた。
崩壊していく周りとは正反対の穏やかな表情だった。
「貴方なら大丈夫な気がするの。……レイをお願い」
「貴方はどうす「私はこの人と一緒に行くわ」
遮った声の持ち主の瞳はどこか晴れやかで、僕には彼女の決意を崩せそうになかった。

――それなら、僕は。

「……わかりました」
言いながら彼の手をとり立ち上がる。
「貴方で良かった。貴方が一緒だったらレイも光を見ることが出来そうね」
最後に聞こえてきたその声に、僕は彼に何をしてあげられるのか考えていた。







「……貴方は後悔、してないのですか?」
フリーダムの中で彼が発した初めての言葉だった。

「どうして?後悔するくらいなら最初からやらないよ」
不可解そうに僕を見てくるから、安心させるように微笑む。
彼には僕がどうして彼を助けたのかわかっていないのだろう。
タリアさんに頼まれた、というのもあるけれどそれ以外にも理由はある。
「僕は、君に生きて世界を見て欲しかったんだと思う。たくさんのものを自分の目でしっかり見て欲しいんだ。……良いところも悪いところもね」
彼にはきっとそういうことが必要なんだと思う。
一点から見るだけではわからないことなんて溢れるほどある。
だから、知って欲しいんだ。
そして知った上で考えて欲しい。いろいろなことを。

とはいっても、僕もまだ暗中模索している最中、という感じなのだけれど。

「貴方はどうしてそんなに世界に希望なんて持てるんですか?」
「そうだなぁ……僕はこの世界には悲しいことや絶望的なことばかりじゃないってことを知っているから、かな」
「……俺と貴方は違う」
「そうだね。この世界に同じ人間なんて一人もいないよ、きっと」
「俺は、クローンです」
そう小さく呟いた彼はなんだかとても儚くて、僕が今離してしまったら存在すら危うくなってしまいそうだった。
「クローンだって一人の人間なんだよ。君は君。君がそれを理解していないでどうするの?」

だって、そうでしょ?
実際に彼は今を生きている。そして、僕も生きている。
たとえイレギュラーな存在だとしても、命ある限り生きるべきだ。

人生なんてちょっとしたきっかけで変わってしまうものだと僕は思う。
それは例えば、誰かの何てことない一言だったりする。

「……僕と一緒に生きようよ」

悔しいけど、今の僕にはこんなことしか言えない。
彼にもっとふさわしい言葉があるのかもしれないけれど、これしか思いつかないから。

「俺と貴方が、一緒に?」
「そうだよ。……僕とは嫌かな?」
僕は彼に与えられる『何か』を持ってはいないかもしれないけれど。

寂しい時。
悲しい時。
泣きたい時。

彼に寄り添うことくらいは僕にだって出来るから。
抱きしめて『大丈夫だよ』って言ってあげられるから。


きっとそれくらいは僕にだって出来るよ。


「……嫌では、ないです」
「ありがとう。これからよろしくね、レイ君」
「はい……キラさん。よろしくお願いします。」


――これからはひとりじゃないよ。

だから、まだ見えない未来もきっと大丈夫。


-end.



後書き。
最終回捏造です。
これ書くために最終回見ようと思ってたんですが、見忘れました。
おかげで激しく捏造です。
ギルさんはしゃべらせるとごちゃごちゃしそうだったので、黙ってます。
ここからレイキラはスタート、ということで進めていこうと思っています。




2005/11/ 6