absolute
ずっと続くモノなんてあるの?
想いなんて不確かなモノ。
それにすがろうとする僕は愚かなのかな…?
「キラ、お前これで何度目だ?」
「……3度目」
「違う。5度目だ」
いつのまにかベッドに寝かされていた僕。
何度目、と聞かれたけど、まだ頭がぼんやりとしていて何のことなのかさっぱりわからない。
だから適当な数を言ってみたんだ。
…やっぱりというか何と言うか、とても静かに怒られてしまった。
だってしょうがないじゃないか。何のことを言ってるのかわからないんだから。
「……」
「お前、まだ寝ぼけているのか?どうせ何のこと言ってるかわかってないんだろ」
「わかんない。そんなに急に言われてもわかんないもん!」
「何怒ってるんだ……5度目っていうのはな、お前が倒れた回数だ」
あぁ、そういえば最近こういう展開が多かったような気がする。
僕、倒れたんだ。それで怒られてるのか。
「…栄養失調と寝不足。お前、何やってるんだ?」
「別に特別なことは何もしてないけど」
「異常と言ってるんだ!歩いてる時はやたらとフラフラしてるし、すぐ倒れるし。どうしてちゃんと休まないんだ!?」
――だって。
だって、皆に生きていて欲しいから。
もう誰も失いたくないから。
――君を失いたくないから。
その為に出来ることなら、何でもするさ。
「……僕は君がいなくなってしまったら、どうすればいいのかわからない」
「俺は大丈夫だ。だから「そんなのわからないよ!絶対大丈夫って言い切れるの!?」
「…キラ」
「僕は嫌だよ……もう誰も失いたくない」
いつも会っていた人が突然いなくなる。
その人のいたところ。使っていたもの。
そういうのを見るたびに生まれる喪失感。
その人の笑顔を思い出すたびに心が哀しくて、痛くて。
「キラ。お前は優し過ぎる…」
そう言って僕を優しく抱きしめてくれるイザーク。
「…そういう君だって十分優しいじゃない」
いつだってそうなんだ。イザークは優しく抱きしめてくれる。
それにどれだけ僕が救われているか知ってる?
「もう少し気を楽にしてもいいんじゃないか?いつもそうやって気を張ってたら、また倒れるぞ」
「…僕が倒れたって、代わりはいるもの」
「お前の代わりなんていない」
「整備が出来る人なんてたくさんいるよ」
「俺はお前がいい。こうやって抱きしめたいと思うのはお前だけだ」
「……僕だってこんな風に抱きしめられて嬉しいのはイザークだけだよ。だからちゃんと無事に帰ってきて欲しい」
「ちゃんとお前の元に帰っているだろう。それだけでは不満か?」
「不満じゃなくて、不安なんだ」
今日は大丈夫だったけど、明日はどうなるかわからない。
きっと『絶対』なんて無いから。
たとえ、本当にあったとしても僕は信じない。
「ひとつ…約束をしようか、キラ」
イザークがそう言うと同時に、僕を抱きしめていた腕の力が少し緩められた。
そしてさっきまでは抱きしめられていて見ることの出来なかった綺麗なアイスブルーと目が合う。
「約束?」
「そう、約束。俺はお前のところにちゃんと帰ると約束しよう。だから、キラは帰ってきた俺を笑顔で迎えて欲しい」
「笑顔で迎える…?」
「あぁ、最高の笑顔でな」
コツンとお互いの額をあわせる。
間近で見たイザークはとても綺麗に微笑んでいて。
「約束、出来るな?」
「…うん。約束する」
「よし。だったらもう寝ろ」
「え…な、何で?僕さっきまで寝てたし」
「さっき寝不足と言っただろ。体調が悪かったら最高の笑顔なんて出来ないと思うが?」
「う、うん。そう…だよね」
「ほら、俺がそばにいるから安心して寝ろ」
僕を寝かせながら言うイザーク。
頭を撫でてくれる優しい手。この手が大好き。
「ありがと、イザーク」
「約束、忘れるなよ。…おやすみ、キラ」
「うん。イザークもね。おやすみ」
きっと約束なんて不確かなモノ。でも信じたいし、守りたい。
『絶対』なんて信じてないけど、君との約束だけは『絶対』だと思いたい。
そんな僕はずるいのかな?
ねぇ、イザーク。約束守るから僕の元にちゃんと帰ってきてね。
-end.
後書き。
携帯サイトのキリリクss。
イザキラでシリアスってリクだったけど、シリアスじゃないっぽい……痛。
キラinザフトで、キラは整備の人ってことになってます。
2004/12/ 3