雨に溶ける




このまま何もかも溶けて無くなってしまえばいいのに…




「何やってるんだろ…」
自嘲気味な苦笑をしながらフェイトがつぶやく。
どしゃ降りの雨など気にする様子も無く、傘もささずにぼんやりと歩いていた。

「こんなことしたって、何も変わりはしないのに。」
そう、そんなことはフェイト自身が一番よくわかっていた。けれど何かしていなければ思い悩んでしまう。

…自分が『普通ではない』ということを。

破壊の力。そんなものは自分には必要無い。
けれどフェイトにはその力がある。

「どうして僕なんだろう」
理由なんてわかっている。でも、つい思ってしまう。
僕じゃなくてもよかったのではないか、と。

「これじゃ堂々巡りだな…」
「だったら、さっさと宿屋に戻るぞ」
「…アルベル。」
いつの間にか後ろにアルベルが立っていた。
「こんなところで何してんだ、お前は。風邪でもひきたいのか?」
不機嫌な様子ではなすアルベル。フェイトを心配してずっと探し回っていたようだ。
「ねぇ、僕には何が出来るのかな?」
「…」
「破壊の力を持っている僕には何が出来るのかな?……この雨で何もかも溶かして消えてしまえばいいのに…」
どこか遠くを見るような目でつぶやくフェイト。とても痛そうな、つらそうな表情だった。
「…!」
そんな姿を見ていられなくて、雨にうたれ続けるフェイトを腕の中に閉じこめてしまう。

フェイトが消えてしまわないように。

―この雨がフェイトをさらってしまわないように、
きつく、きつく抱きしめ続けた。

どうか、どうか
愛しい人がこれ以上傷つきませんように…


-end.



後書き。
ハイ、不発弾だったようデスネ…。げふーん


2004/7/26