不器用だけど、僕にはこれが精一杯だから。



こんなに大きな想いをどうやって伝えればいいんだろう?

どうやったらうまく伝わるんだろう?


「アスラン。僕、君に隠してることがあるんだ」
「何?」
「すぐに言っちゃったら隠してる意味無いよ……ねぇ、アスラン。僕の隠してることが何だかわかったら、ちゃんと教えてあげる」
「わかったら教わる必要無いと思うんだけど」
「いいのっ!このクイズやるの?やらないの?」
僕のこの質問にアスランはため息をひとつついてから答えた。「…やるよ」と。

面倒そうに言うアスランに少しムッとしたけど顔には出さないように頑張る。
アスランがよく言うから。
「お前は思ってることがすぐ顔に出るな」って。アスランの言うとおりになるのは、なんか悔しいから笑ってみせる。
「キラ、顔引きつってるけど大丈夫?」
クスクスと笑いながら言うアスラン。
「引きつってないもん!」
僕の頭に手をポンッと乗せて撫でてくるアスランの手を払いながら言った僕に、アスランは急に顔を近付けて一言だけ言った。
「可愛いね、キラは」

か…可愛いって何?
僕、一応アスランと同じ男なんですけど。

子供に見られている上に男として見られてない。

……いや、性別は僕の隠し事には関係無いんだけどさ。むしろ女の子の方が都合良かったかもなんて思う時もある。
だって僕がもし女の子だったらもっと積極的に言えたかもしれないし。

「キラ、クイズのヒントは無いの?」
突然真面目な顔をしてアスランが言う。
「ヒント……ヒントは特に無いなぁ。うん、ヒント無し!」
「それじゃ無理だよ…何もヒントが無いのに答えるなんてさ。ねぇ、キラはクイズがどんなものか知ってるの?」
…馬鹿にしないで欲しい。僕にだってそんなことわかってるよ。
ヒントなんて思いつかないんだもん。何か言ったらすぐにバレてしまいそうだから。
「と、とにかくヒントは無いの!」
これ以上馬鹿にされるのは嫌だから、それだけ言ってアスランの前から去ろうとした。
「ちょっと待てって、キラ!…俺、お前の隠し事なんとなくわかるよ」
アスランは微笑みながらそう言う。
なんとなくって何だよ!?とか思ったけど、とりあえず答えを聞いてみることにした。
「じゃあ答えてください。はい、どうぞ」
「キラは俺のことが大好きです。むしろ愛しちゃってます。……そうだろ。違う?」
「…何それ。なんか嫌な言い方」
「違うの?ねぇキラ。……キラ、怒った?」
うつむいた僕にアスランはさっきとは打って変わって優しく声をかけてくる。
僕がクイズになんかしたりしなければこんな嫌な空気にならなかったのに、と今更後悔する。
最初からちゃんと真面目に伝えておけば。
僕にそんな勇気があれば良かったと思う。

「キラ、ごめんな。キラ……ちょっとふざけすぎたな、俺」
「……僕の方こそごめんね。僕、どうすれば君にうまく伝えられるかわからなくて。ごめんね、アスラン。…僕、僕ね」
「うん、なぁに?キラ」
小さい頃みたいに優しい微笑みを僕に向けながら、僕が言いやすいようにうながしてくれる。

そうだよ、こんなアスランだからこそ僕は――

「好き…なんだ。アスランがさっき言ったとおり僕はアスランが大好きのなのっ!」
結局、こんな小さい子供のような不器用な伝え方になってしまった。
どんなに頑張っても僕にはこれが精一杯だったみたい。

「ありがとう。キラのその気持ち、すごく嬉しいよ」
言いながらアスランは僕を抱きしめる。
そんなアスランの突然の行動に僕はどうしていいかわからず、おどおどしてしまう。
「俺もね、キラのことが大好きだよ。すごくすごーく」
額にキスした後、少しかがんで僕と目線を合わせるアスランに急に恥ずかしくなってしまう。
あんなに綺麗な翡翠にみつめられたら目をそらさずにはいられない。

「キラ、俺のこと見てくれないの?」
「だ、だって恥ずかしいんだもん」
「やっぱり可愛いな、キラは」
ぎゅっと抱きしめられる。少し苦しいくらいに。
「苦しいよ…アスラン。……ちょっ、何してんのアスラン!?」
今まで誰にもされたことが無いことをアスランが突然するから驚いた。

――もう、顔どころか体中真っ赤になってるような気がする。

「耳……ぅん。食べちゃ……やぁ…ん」
「俺はキラのことぜーんぶ食べちゃいたいよ。今日はとりあえず耳と……ここだけちょうだい?」
言うと同時にキスしてくるアスラン。……今度は額ではなく唇に。

「……アスランの変態」
「俺がこんな風になれるのはキラの前でだけだよ」
アスランはちゅっちゅっとついばむようなキスを繰り返す。
「キラ。俺ずーっとキラのことだけを愛し続けるから、キラも俺のことだけを愛し続けて?」
「……うん」

『愛してる』なんて恥ずかしくてなかなか言えない。
だから聞き逃さないでね?アスラン。
「アスランだけ……愛してる」
言いながら抱きしめてくれているアスランを見上げる。

――僕はその時のアスランの顔がとても好きになってしまった。


だから、恥ずかしいけどその顔が見たいから言い続けるかもしれない。


-end.



後書き。
携帯サイトのキリリク。甘々とのリクだったのですが果たしてこれでいいのだろうか…?び、微妙ー!!




2005/ 5/13