ダイスキ。


「大好き」
「…何だ、急に」
「だから大好きなんだってば」
「そんなこと知ってる。お前が俺のこと『大好き』なんてことはな」
朝、起きたら急に『大好き』を言いまくり続けているフェイト。
最初の方は気分が良かった。フェイトはあまり『大好き』とか『愛してる』とか言ったりしないから。
でもさすがに言われ続けると、何か変だと感じてきた。
「言っちゃ駄目だった?」
「いや別に駄目じゃねえけど、急に言い出すから」
「…言い続けてたら、アルベルは僕の前からいなくならないかもしれないだろ」
「…何言ってんだお前は」

理由がわかったようなわからないような。
とりあえず、こういう時のフェイトには気がすむまで 話させたほうがいい。フェイトは何でもかんでも溜め込んでしまうから。

フェイトがすっきりするまで聞いてやった方がいい。

「伝え続けなければ伝わらないことってあるだろ。だから僕はアルベルに『大好き』って言うんだ」
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。言っただろ、俺はお前の気持ち知ってるって」
「全部伝わってないかもしれないだろ」
「お前、俺が言ったこと信じないのか?」
「信じてるよ。信じてるけど…」

不安、なんだろうな。悪い夢でも見たんだろう、多分。
そんな時に俺がしてやれることは限られている。

話を聞いてやること。

そして…

「ぅわ…急にどうしたんだよ?」

抱きしめてやること。

「こうしてれば俺しか感じられなくなるだろう?フェイト、俺とお前はいつまでもずっと一緒なんだ。お前が俺のこと嫌いになったとしても離すつもりはねえよ、俺は」
「…そこまで言うなら絶対離すなよ。僕をずーっとずーっと抱きしめていて。僕が不安になって変なこと言い出さないように」

一息ついて、口の端をつり上げながら言う。
「お前に言われなくても、そうすると今言ったばかりだろ」
「…そうだね。約束だよ」

「お前が不安になんてなってる余裕が無いくらい俺のことしか考えられないようにしてやるよ」
  腕の中にいるフェイトの耳もとで、そう囁いてやった。

今はそれだけで十分だろ?
――フェイトの笑顔がその答えだった。


-end.



2004/11/8