だから、笑う。



「キラさん!」
「な、何?どうしたのシン。そんなに目輝かせちゃって」
呼ばれたから振り向くと、そこには何故か最近慕ってくれているシンがいた。
ミネルバへ来たばかりの頃は敵意むき出しな感じだったのに、少し前から急に「キラさん、キラさん」と僕を慕ってくれるようになっていた。
「キラさん、俺と一緒に来てください」
そう言うなり僕の手を引っ張って歩き出した。
「え。ちょっとシン!?僕、これからアスランのところに……」
「アスランさんなんて放っておいて大丈夫ですよ」
「でも…僕呼ばれてるから」
「後でいいじゃないですか」
何を言ってもシンは足を止めるつもりがないらしく、僕は引っ張られるままに歩いている。

アスランに何て言い訳しようかとあれこれ考えていたら、いつの間にか止まっていたシンにぶつかってしまった。
「うわっ!…ごめんね、シン」
「キラさん、今日何の日だか知ってますか?」
「今日?…何の日だろ。僕あまりそういうの詳しくないからわかんないなぁ」
「本当にわからないんですか!?」
「う、うん。ごめん」
すごい勢いで僕に問いかけるシンにどうしていいかわからなくて、とりあえず謝ってみる。
シンは怒ってはいないようだけど、なんだか呆れているみたいだった。
「……まぁ、キラさんらしいですよね」
力が抜けたようにがっくりとするシン。
「とりあえずこの先に行けばわかりますよ。みんな待ちくたびれちゃうだろうから行きましょう」
そう言うシンに連れられて一緒に入ったところには――。


「誕生日おめでとう!」
入った途端、いろんな人から言われて、少しの間呆然としてしまった。
「……」
「…キラ?……キーラ?」
アスランに呼ばれてはっとする。
「あ……今日、僕の誕生日だった…のか」
「やっぱり忘れてたんだな……ま、キラらしいけどな」
微笑みながら言うアスランに僕も自然と口元が緩む。
あたりを見回すとミネルバのクルーたちがみんな笑顔で僕を見ていた。

部屋の真ん中にはケーキが置かれていた。
「やっぱりケーキがないと!…キラさんは甘いもの嫌いですか?」
「ううん。甘いものは大好きだよ」
「じゃあ食べてください。これキラさんのためのケーキなんですから」
そう言うルナマリアに手を引かれケーキの前に連れて行かれた。
「座ってください、キラさん」
「うん」

すっかり忘れていた自分の誕生日。
それを覚えてくれていた人たち。

……心が、とても暖かくなっていく。

「ちょっ……キラさん!?」
シンが驚いたような声を上げる。
それはきっと……僕が涙を流していたからだろう。
「どうしたんだ?キラ…」
「なんか、嬉しくって。……こんな風に祝ってもらうの久々な気がするから」
小さい頃はこんな風に祝ってもらっていた記憶がある。
でも、最近はそれどころではなかったから。


「みんな、ありがとう。…すごく嬉しい」
感謝の気持ちは言っても言っても言い切れないくらい。
「どういたしまして。ほら涙を拭いて?みんな心配してる」
アスランに言われて涙を拭く。
こんな時にきっと涙は不似合いだろうから。
みんなが望んでいるのは僕の笑顔なんだろうと思う。

――だから、笑う。

僕の好きなみんなが好きだと言ってくれるから。

「みんな…大好き!!」
そう言ったらみんなも微笑んでくれた。


なんて、幸せなんだろう。

今日、きっと僕は世界一の幸せ者だ。


-end.



後書き。
キラinミネルバでCPはほぼ無しに近い微妙過ぎるモノ。
記念すべきキラたんの誕生日なのに……(泣) とにかく、キラたん誕生日おめでとう!!ってことで。

あと2つくらいキラたんおたおめssアップするつもりです。




2005/ 5/17