いつもと同じようで、どこか違う一日。
「おはようございます、隊長」
「……おはよう、キラ」
いつもとどこか違う様子のキラに少し驚きつつも、俺は朝の挨拶をした。
俺とキラの朝は「おはよう」と言う普通の挨拶とキスで始まる。
いつも通りキラにキスをする。
そして、頬を少し赤く染めるキラにいつまでたっても可愛い反応をする、なんて思いながら着替えるのが俺の日課だった。
それなのに、今日は違った。
「今日が何の日か覚えてますか?」
何故かこんな質問をされた。しかもやたらにこやかに。
……敬語というのもすごく気になる。
二人でいる時にキラが敬語を使うなんてこと滅多に無い。
キラが敬語を使うのは、俺に何か言いたいことがある時、怒っている時くらいだ。
「今日か。今日はお前がプラントに来てから俺に初めて会った日だろう?」
「はい、そうです。今年は覚えていてくれたんですね」
「今年は」を強調して言うキラ。
――そう、去年は忘れてしまっていたのだ。今日という日のことを。
キラは一日中俺にきつく抱きついたまま泣いていて、何をしても泣き止んでくれないし、仕事もまったく出来なかったという苦い記憶がある。
「去年の分もいっしょに祝ってくれるって約束も覚えてくれていますか?」
「あぁ、覚えてる。覚えているからその敬語をやめてくれないか?」
「……だって、これは罰ゲームなんだもん。でも、今年はちゃんと覚えてくれていたみたいだから敬語はやめてあげる」
去年、悲しい思いをさせてしまったから今年はキラのわがままに思う存分付き合ってやろうと思う。
普段はわがままなんて一切言わないキラだからこそ、こんな時くらいは好き勝手にやらせる。
俺にわがままを言うようになってくれたという事実も嬉しい。
出会った頃は会話をすることすら難しかったのだからすごい進歩だと思う。
キラを変えられたのが俺だというのも嬉しい。
「何がしたいんだ?キラは」
「最近ずっと忙しかったからゆっくりしたいんだ。だからいっしょにゆっくりしてくれる?」
ベッドに横になったままそう言うキラを優しく抱きしめてやりながら耳元で囁く。
「お前の望むままに」と。
満面の笑みで俺を見ているキラが愛おしくてたまらない。
安心して俺に身を預けてくれているキラを嬉しく思う。
頑なに人と必要以上に関わることを拒否し続けていた出会った当時のキラ。
そんなキラが自ら俺に抱きついてくる。
――あぁ、なんて。
なんて、愛おしいんだろう。そう思わずにはいられない。
「いつもありがとう、イザーク。これからもよろしくね」
「あぁ。よろしくな、キラ」
そんなことを言い合いながら一日はゆっくりと過ぎていった。
-end.
後書き。
携帯サイト1周年記念のssです。
イザークらしくないかと思いきや、実はいつも通りなイザーク。
キラらしくないかと思いきや、実はいつも通りなキラ。
そんな二人が書いてみたかったんです。
だから『いつもと同じようで、どこか違う一日。』という題名になりました。
まぁ、実際書ききれてないような気がしますけど(涙)
2005/ 7/18