君の世界なんて



朝、目が覚める。
周りを見渡すとそこは、君の存在する世界。

――君と僕の存在する世界。



「んー……よく寝た。今日は何しようかな?」
目的の無い旅。大抵は毎日朝起きてからすることを考える。
とりあえずベッドから出ようとするフェイト。

……が、後ろからしっかりと抱きしめられている為、動くことすらままならない。
「アルベル寝てるはずなのに。んー!!…駄目だ、動けない」
どんなに頑張っても自分の力ではアルベルにはかなわない。
「しょうがないなぁ。起こすしかないか…ねぇ、アルベル起きて」
くるりと向きを変え、アルベルと向かい合わせになる。そして、唯一動かすことの出来る腕と手でアルベルの肩を揺さぶってみる。
「……」
「あーもう!早く起きてぇーッッ!!」
どれだけ大きな声を出しても、肩を揺さぶっても、まったく起きる気配の無いアルベル。
「はぁ……どうしよう。別に急いでるわけでもないんだけどさ、このままってのはちょっと」
そう言いながら窓を見る。
もう完全に太陽は昇っていて、かなり眩しい。
どうやらもうお昼も近いようだ。
(今日はお昼ご飯は何にしようかな)
そんなことを思いながら目の前で未だに眠り続けている人物を見る。
(うん。デザートはプリンにしよう)
寝ているのはわかっているけど、口に出すのは少し気が引けた為、思うだけにした。
そしてプリンを連想させる髪の毛に手を伸ばす。
前髪を少し退かせて顔がよく見えるようにする。
「いつ見ても綺麗な顔だよな…前髪で隠れちゃって普段はほとんど見えてないけど、隠さなかったら結構モテたりして」
クスクス笑いながら言う。

「……うるせえな」
急に赤い目が開かれる。
「あ、やっと起きたね〜。おはよう」
手を離してアルベルの前髪を元に戻す。
「何なんだよ?俺はまだ寝てえんだよ」
そう言うとまた寝る体勢に戻る。
「え!?僕、今おはようって言ったよね?もう起きてくれよ!!」
寝直そうとしているアルベルの肩を揺らす。
「うるせえっての!おとなしくしてろっ」
少々キレ気味にフェイトを抱きしめている腕の力を強くする。
「ちょ、ちょっと…もう起きる時間だよ?」
「お前も寝るんだよ。それがいやなら1人でどこにでも行け」
そう言い放たれ、うつむくフェイト。
「……何でそういうこと言うんだよ。1人でなんて行くわけないだろ」
「だったら一緒に寝てろ」
アルベルにうつむいていた顔を上げさせられる。

赤い目と目が合う。
何故だか目をそらすことが出来なくて、少しの間見つめ合った。

「お前を1人でどこかに行かせるなんてするわけねえだろ?俺はお前と離れる気はねえ」
「僕だって……アルベルと離れたくないよ。だから一緒に旅してるんだ」

そして重なる口唇。
――それは何だかいつもよりくすぐったくて、甘くて。


「今日は寝て過ごす。たまにはこういうのもいいんじゃねえの?」
「うん。僕はアルベルと一緒だったら何しててもいいよ」
そう言い目をつぶる。


向かい合って眠ると、アルベルをいつもより近くに感じることが出来るような気がした。



そこがたとえ誰もが楽しいと言う遊園地だとしても、君がいなければつまらない。

そこがたとえ幸せの国と呼ばれるところだとしても、君がいなければ幸せになんてなれない。


僕は君と一緒にいられればどこだって、何をしていたって幸せなんだ。




――覚えていて。僕は君のいない世界では息をすることも出来ずに、死んでしまうんです。


-end.



後書き。
甘い…のかな。どうなの、自分。
寂しいと死んでしまうウサギ的なフェイト。
でもそんなウサギが私は好きです(何)




2004/ 8/20
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