耳に残るは君の声



「……きて…」
かすかに聞こえる声。
あぁ、これは…
オレの好きな声だ。
「おき……アル…」
何を言っているか聞き取れないけど、なんだか心地よい。
「もう…だよ。はやく……て」
何だろう…それにしてもさっきからまぶしいな…


「もうッ!朝なんだから早く起きてよ、アルベル!」
「…もう朝…か」
「とっくに朝だよ!」

どうやら朝から機嫌を悪くさせてしまったらしい。
「朝早く起きることはいいことなんだよ?早起きは三文の得って言うくらいね」
三文…?よくわからないけど一応頷いておいた。
こんな感じで朝食を食べている最中ずっと説教されてしまった。
明日からは、なるべく早く起きるようにするか…


「ねぇ、アルベル?」
宿屋で出発の準備をしている時からフェイトはよく話しかけてくる。
なかなかアルベルから話しかけることは無い。
フェイトがいつも話しかけてくるし、重要な話しもフェイトから持ち出してくるからだ。
1日中フェイトと話していると言ってもいいくらいだ。

「聞いてるの!?」
「あぁ。聞いてる」
「それで、次に行くところなんだけど…」
「お前の好きにしろ」
「…んー。そう言われるといろいろ悩んじゃうんだよなぁ…」
どうやら次の目的地は候補がいくつかあるらしい。
「どこに行くつもりなんだ?」
「えーと…シランド行って久々にネルさんに会うのもいいし、ペターニでギルドに顔出すのもいいよね。あとはカルサアでウォルターさんに会うってのもあるよ。どうしようかなぁ…ねぇ、アルベルはどこがいいと思う?」
…一体何の為に行くのかわからないような気がするんだが。そこで一応聞いてみることにした。

「何が目的なんだ?」
するとフェイトは即答する。
「え?たまには会いたいから」
…やっぱりな。コイツはこういうヤツだ。
「それで、お前がその中で1番会いたいのは誰なんだ?」
「ん…やっぱりネルさんかなぁ」
「だったらシランドでいいだろ」
「うん。この前はネルさんがお仕事だからって会えなかったからね。明日シランドへ行こう!」

こんな他愛もない会話でも、なんだか暖かい気持ちになれる。
―昔は感じることの出来なかったキモチ。

フェイトと出会って一緒に旅をすることで初めて感じることが出来た。

「じゃあ、明日は早めに出発してシランドへ向かおう。じゃ、おやすみー」
「あぁ。オヤスミ」

毎日平穏に過ぎていく。昔だったらこんなのは嫌だったかもしれないが、今はこんな日々が続くことを幸せに思う。
そして、これからもこんな日々が続くことを願っている。



「…アールーベールー?」
今日の目覚めてから1番に聞いた声もフェイトの不機嫌そうな声だった。

いつも隣にいるのが自然な存在。
朝、目が覚める時から眠りにつくまでずっと聞き続けている愛する人の声。
これからもずっと聞き続ける。



そして脳と耳に刻まれ続ける、君の声。


-end.



後書き。
…なんかアルベルが別人なような。
未だにわからないキャラ各々の口調。勉強が足りないデスネ〜

お題小説これから頑張ってやっていくので感想などよろしくお願いします。
感想って本当いい励みになりますからvv




2004/ 7/27
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