もし、星に願うならば
どうしても捨てられないものがある。捨てたくないか捨てられない。
――捨てたくないものってある?
たとえば『想い』とか。
僕は君のこと好きって『想い』をずっと捨てずに持っていたい。
――どうしても叶えたい願いってある?
たとえば…
「おい!何なんだ、急に」
「いいから来てくれよ。ちゃんと後で説明するから」
アルベルの手を引っ張って、目的地に向かってただひたすら歩く。
宿屋から少し遠い目的地。
まだそれがどこかは教えない。
「行き先くらい教えろ」
「駄目。それじゃ楽しくないから」
「何だそれは」
「あともう少しだから。とりあえず黙ってついてきて」
どうしてもアルベルと見たいものがある。
宿屋から歩くこと約15分。
「はい、到着」
「何なんだ?ここは」
ついたところは普通の草原。
どこも変わった様子の無いただの草原。
「うーん…何なんだろう?僕も別に詳しいことを知ってるわけじゃないんだけど」
「だけど?」
「星がさ、たくさん見えるんだ。空を見上げればどこを見ても星で綺麗だなーと思って」
「星なんてどこでも見えるじゃねえか」
「それはそうだけど…でも何かさ、こんなに静かで星が綺麗でさ…落ち着く、よな」
「…確かに、そうだな」
そう言いながら座るアルベル。
暗いからあまり見えないけど、きっと笑っているんだろうなとなんとなく思う。
つないでいた手を引っ張られたから僕もアルベルの隣に座った。
「…最近、こんな風にゆっくり出来なかったから」
「そうだな」
「アルベルともあまり話し、出来なかったし」
「あぁ。そうだったな」
最近いろいろ忙しくて、ろくに話すら出来ない日が何日か続いた。
こんな風にゆっくりと時間が過ぎていくことすら心地いい。
「…寂しかった?」
「お前が、だろ?」
笑いながら言うアルベル。
…あぁ、もう。この人には何でもわかってしまうらしい。
「うん、すごく。…すっごく寂しかった」
「わかってる。もっとこっちに来い」
アルベルに抱き寄せられる。
――すごく、安心する。
アルベルと手をつないだり、こうやって抱きしめてもらうだけで安心できる。
一緒にいられるだけでもいいけど、こうして触れ合っている方がいい気がする。
「…アルベルとこうしてると安心する」
「なら、ずっとこうしてやろうか?」
「うん…でも、そろそろ帰らないと。皆には黙って出てきちゃったから心配してるよ、きっと。」
「……帰るか」
「うん…え!?ちょっ…アルベル!?」
「こうしてると安心するんだろ?」
アルベルは僕を『お姫様だっこ』して歩きだした。
「え…あ、うん。確かにそんなこと言ったけどさ…恥ずかしいよ」
「今更、だろ?」
そう言って微笑むアルベル。
今ならわかる。すごく綺麗に微笑んでる。
さっきよりアルベルの顔が近いからわかった。
「そういう顔するの…反則」
「何でだ?」
「照れるから。…何かよくわかんないけど照れるんだよ」
顔が赤くなっていくのを感じる。
…アルベルにバレてたら嫌だな。暗いから顔色までは多分わからないから大丈夫だと思うけど。
「お前、本当に可愛いな」
「そういうこと言われても、困る」
褒め言葉なんだろうけど、僕は女の子じゃないから。
何て答えればいいか困る。
「褒めてんだよ。嫌か?」
「嫌じゃないけど…うーん……んっ」
どう答えようかと考えていたら、急に口をふさがれた。
「ん……もう、急にするなよ…」
「ほら、ついたぞ。このまま入ってもいいのか?」
「駄目だよ。降ろして」
「俺はこのままがいいんだが?」
「降ろして」
降ろしてもらいながら、ふと思ったことをアルベルに言う。
「さっき星を見てる時に、流れ星を見たんだ。それで願い事しようと思ったんだけど」
「しなかったのか?」
「考えてるうちに消えちゃったんだ」
「…どんな願い事をするつもりだったんだ?」
願い事はいくつもあった。
どの願い事もみんな、あるひとつのことに関連することだった。
「アルベルのこと。ずっと一緒にいたいとか、そんな感じのこと。いろいろあり過ぎてどれにするか悩んでたら流れ星、消えちゃっててさ」
「……」
急に黙りこんだアルベルを不思議に思い、顔を覗き込んでみる。
「どうしたんだよ?」
「…っ。なんでもねえよ」
「そう?じゃ、中に入ろうか」
「あぁ」
僕の後ろから入ってくるアルベルを振り向いて見たら、顔が少し赤くなっていたような気がした。
――ずっと一緒にいたい。
僕が星に願おうとしていたこの願いが叶いますように……
-end.
後書き。
ラブラブというリクだったはずなのに、違うような……
ごめんなさいー!!携帯サイト10000hitの記念すべきキリリクだったのに。
私が星とか月とか天体の話が好きなんで、そういう感じの話が多いのかも。
2004/11/17