僕は君がいれば他に何もいりません。
――君はそんな僕をどう思うのかな?
アルベルに抱きしめられて眠る。
いつもは僕の方が先に眠くなって寝てしまうけど、今日はアルベルの方が先に眠ってしまった。
僕は何故か眠れずにいた。
とても静かな夜。
こんな時こそすぐに眠ってしまいたいのに。
――いろいろ考えてしまうから。
今日は平和だったなぁ、とか普通のことから始まる。それは別にかまわない。
でも思考はだんだんと暗い方に向かう。
こんなこと考えたくもないのに、考えてしまう。
今は現実なのだろうか?
夢じゃないのだろうか?
ここは僕が都合のいいように作った幻の世界なのかもしれない。
君は僕の作った幻で、僕が夢から覚めると同時に消えてしまう。
――そんなの嫌だよ、アルベル。
自然と涙がこぼれる。
急に不安になるんだ、どうしようもなく。
「…フェイト?」
呼ばれたと同時に、僕を優しく抱きしめてくれている腕の力が少し緩められる。
「どうした?…泣いてるのか?」
「ご…めん。泣くつもりなんてなかったのに」
「怖い夢でも見たか?」
「ゆ…め……。今ここにいるアルベルは夢?」
確認するようにアルベルの頬に手を添える。
「現実だ。お前が今触っているところはちゃんと暖かいだろう?」
「現実……なのか。アルベルも僕もちゃんとここにいる…?」
僕がアルベルの頬に添えていた手をつかんで、キスをするアルベル。
「しっかりしろ。ちゃんと俺を感じろ。いいか、俺もお前もちゃんとここに存在してる。夢じゃなくて現実に、だ」
そう言って、また強く抱きしめてくれる。
「僕は君が隣にいてくれれば何もいらないんだ」
「俺もお前が隣にいれば十分だ。今の俺にとってお前は必要不可欠なものだ」
必要不可欠…そう言ってくれる君が僕のそばにいてくれるだけでいいんだ。
「早く寝ろ。俺は眠いんだよ」
「うん……。また明日。おやすみ、アルベル」
また明日、夢ではない現実で会えるから。
今日は眠ってしまおう。僕の大切な君に抱きしめられながら。
-end.
後書き。
暗い感じにアルフェイ。
不安定なフェイトと心配するアルベルって感じですかね。
私は夢と現実の境目がよくわからないってことがたまーにあります。
ま、基本的にぼんやりしてる時とか寝ぼけてる時ですけど。
おかげで「学校に遅刻するー!!」とかありえないことを時々叫びます。もう学生生活終わったのに(笑)
2004/11/17