お天気とチョコレート



――朝起きたら見慣れないモノ、あるはずのないモノがあった。



「…」

気持ちよさそうに寝ているフェイトを起こさない程度に触ってみた。
「ん…くすぐったい…よ」
クスクス笑いながらもまだ完全には起きていないフェイト。

この反応を見るとどうやら本当にフェイトに『ネコミミ』が生えているらしい。

…これは一体どういうことだ?
とりあえずこんなこと普通のヤツらには出来ないだろうから、やるとしたら…

「早く起きなさい。もう朝よ」

コイツしかいないだろう。

「オイ、コレは何だ?」
フェイトのネコミミをつかんでマリアに問う。
「い、痛いよ!もう、何するんだよ…」
フェイトがアルベルの手を払いつつ起きあがった。
ブツブツ文句を言いながらベッドから立ち上がる。

「「!」」

――オプション付きか…

ぼーっと歩き回っているフェイトの後ろ姿にはいつもは無いモノがふよふよと動いていた。

(しっぽまで…)
さすがにマリアもここまでは予想してなかったらしい。

「僕…ちょっと外出てくる。」
「な、何だと!?お前何しに行くんだ?」
「え、ちょっと散歩だけど…」
「やめろ。そんなことしなくたって困らねえだろ」

今この状態のフェイトを外に出すのはマズイ!

「そうね…さすがに今日は外に出るのはよした方がいいかもね」
マリアもアルベルと同じことを思っていたようだ。

「…変なの。何でだよ?理由を言ってくれないと僕は納得できないじゃないか」

確かに、フェイトは自分の姿が見えていないし、納得できないのは当然だろう。
「お前、今すぐ鏡見てこい」
「え、何で?」
「いいから。早く見てこい!」
「…?…うん。何だよ、そんなに強く言うこと無いだ……!?」
鏡を見た途端、フェイトは自分のいつもと違う姿に驚く。
「ちょ、ちょっと何コレ!?…ネコミミィー!?」
鏡を見ながら自分で触ってみる。
「うわー、ふわふわだなぁ…痛っ…やっぱり生えてる…」
どうやら根本を確かめたり、ひっぱったりしてみたらしい。
「あと後ろも」
「え、後ろ??……えぇーー!?」
アルベルに言われてやっと気付くフェイト。
「鈍いんだよ、阿呆が」
「う…どうしよう。これじゃ恥ずかしくて外に出れないよ。アルベル、マリア教えてくれてありがと」
そう言ってベッドに座り込む。

「お前、そこでじっとしてろよ」
「う、うん」
フェイトを部屋に残したままアルベルはマリアと外に出ていく。

「あれはいつ直るんだ?」
「さぁ…多分明日には直るんじゃないかしら?」
「…」
疑うような目つきでマリアを睨むアルベル。
「…何よ?大丈夫よ、明日まで待ちなさい。それより、今日だけなのよ?あんな可愛い姿のフェイトを見られるのは。感謝して欲しいくらいだわ」
急に開き直ったマリア。そして自分の部屋に戻って行ってしまった。
アルベルもフェイトが待っている部屋へと戻る。

「何の話してたんだい?」
「別に何でもねえよ」
質問にぶっきらぼうに答えながらアルベルはフェイトの後ろに座る。

「触らせろ」
「え?ちょっと待ってよ」
許可を得る前にフェイトのネコミミに触り出す。
「…くすぐったいよ…もう、何ー?」

いつの間にかフェイトとアルベルの体は密着していた。
「んー、なんか…」
フェイトはだんだんアルベルの方に倒れていく。
「眠いのか?」
「ううん。でも何か…気持ち、良くって…さ」
それを最後にフェイトは瞳を閉じてしまった。
眠ってしまったらしいフェイトを後ろから抱きしめながら、手を離したネコミミとしっぽを見る。
「確かに、たまにはこういうのもいいかもな」
そう言って、またふわふわのネコミミとしっぽに手を伸ばす。
そして、触る。
ふわふわしてて触り心地がいい。
しばらく触っていたが、強くつかんでしまったようで、痛かったのかフェイトが起きてしまった。
「んー…もう、僕の耳引っ張らないでくれよ。ちゃんと生えてるんだから、痛いよ」
「…悪い」
「明日になれば直るかなぁ…さすがにコレはキツイよな」

フェイトからしてみればそうだろう。こんな姿じゃ外に出ることすら出来ない。

……たとえ周りがどう思っていようと。


――次の日、フェイトはいつも通りの姿に戻っていた。
そこには喜んで外へ散歩しに行くフェイトと、それに付き合って一緒に外へ出ていくアルベルと…

「次は何にしようかしら…」と思案するマリアの姿があったとか…


-end.



後書き。
ありがちな感じ。これでも精一杯頑張ったんですッッ!!


2004/8/3