ライバル
「キラさん!どこ行くんですか?」
「ん?アスランのとこ」
視界にキラさんが入ったために俺は走ってキラさんに近寄った。
「え!?どうしてですか?アスランさんに何か用なんですか?」
「うん。これ持って行こうと思ってね」
言いながら持っている書類を指差すキラさん。
「俺が持って行きますよ。ちょうど俺もアスランさんに用事があるんです」
「本当?ありがとう、シン。僕まだいろいろ仕事あるから助かるよ」
笑顔でそう言うキラさんに俺も自然と顔が綻んだ。
書類を受け取ってキラさんと別れる。…が、俺はひとつ言い忘れたことを思い出した。
「あ…キラさん!」
「え。なぁに?シン。どうかした?」
俺が呼ぶとキラさんは足を止めて振り向いた。
「キラさん、お昼一緒に食べませんか?」
「うん、いいよ。シンはもう休憩なの?」
「はい。アスランさんのところへ行って用事を済ませれば休憩になりますね」
「じゃあ、用事が終わったら僕のこと呼びに来てくれる?」
「はい!すぐ終わらせちゃうんで待っててください」
俺がそう言って、また別れる。
本当はアスランさんのところに用事なんて全く無いけれど、キラさんをアスランさんに近付けたくないためにこの書類を持って行くことにした。
キラさんを一人でアスランさんに近付けたら、アスランさんは何をするかわからない。
キラさんはいつもぽやーんとしているから不安になる。
キラさんはアスランさんのこと幼馴染としか思っていないようだけど、アスランさんは絶対キラさんのことを幼馴染以上として見ている。
俺がキラさんと必ず話しかけてくるし、なにかと邪魔してくるし。
はっきり言って邪魔なんだ。毎回毎回邪魔されていていい加減嫌になる。
貴重な俺とキラさんの時間なんだから二人でゆっくり過ごしたいのに。
「だから今日こそ言ってやるんだ!」
アスランさんの部屋の前で深呼吸する。
「これはキラが持ってくるはずのものだよな?何でシンが持ってくるんだ?」
「キラさんが忙しそうだったので、俺が代わりに持ってきたんです。何か不都合なことでも?」
「あぁ。俺はキラに頼んでいたんだからな」
俺とアスランさんはいつもこんな感じだ。
俺は譲る気なんてこれっぽっちも無いし、アスランさんも同じらしい。
アスランさんはキラさんと幼馴染だから、俺の知らないキラさんをたくさん知っているらしい。
最初の頃はそれがすごく悔しかったけれど、今はそうでもない。
過去も確かに大事だと思う。でも俺は過ぎ去ってしまった過去より今が大事だと思うんだ。
キラさんと一緒に今を生きて、たくさん思い出を作りたい。
ただ、それだけなんだ。
「……俺、キラさんのことをあなたが想ってる以上に想ってますから」
「そんなことわからないな。俺はキラのことを誰よりも想っている自信がある」
…俺のライバルは強敵だ。
だけど、負けたくない。負けられない。キラさんは絶対に渡さない。
「…そうですか。……ひとつだけ言っておきます。俺を甘く見ない方がいいですよ」
それだけ言って俺は部屋を出た。
「キラさん!迎えに来ましたよ」
「はーい。ちょっと待っててくれる?もう少しで終わるから」
キラさんの仕事が終わるまでの間、ひとつ質問をしてみた。
「…キラさん。俺のこと、どう思ってるんですか?」
「シンのこと?……大好きだよ。僕、いつも言ってるのにシンは僕の言葉を信じてくれないの?」
「信じてますよ。俺、キラさんの口から『好き』って言ってもらうのが嬉しくて。…つい聞いちゃうんです」
「……シンは?」
「え?」
「シンは言ってくれないの?僕だって聞きたいよ……君の口から」
顔をほんのり赤く染めながら言うキラさん。
俺を目が合うと、下を向いてまた作業をやり始めてしまった。
そんなキラさんが可愛くて、バレないように静かに笑った。
『僕、年下のシンに可愛いなんて言われるの嫌だよ』
キラさんがこんな可愛いことを言っていたのを思い出した。
キラさんが嫌だと言っていたから口に出しては言わないけれど、やっぱりキラさんは可愛い。
「…俺だってキラさんのこと大好きですよ。……愛してます、キラさん」
下を向いて作業を続けるキラさんを後ろから抱きしめながら。耳元で囁く。
「ちょっ……シン?くすぐったいよ」
クスクス笑いながら言うキラさん。
そんなキラさんを今度は正面から抱きしめる。
俺の突然の行動に驚いたのか、キラさんは俺の名前を呼びながら俺を見つめてくる。
「シン!?…な、何なの?ねぇ…シン?」
慌てた様子で俺に尋ねてくるキラさんの頬に軽くキスしてから俺は一言だけ言った。
「見せ付けてやったんです」と。
俺がキラさんを抱きしめる少し前、俺はある人をみつけた。…アスランさんをみつけたんだ。
多分、キラさんを探しに来たんだろう。
だから抱きしめた。見せ付けるようにして。
「キラさん、お昼食べに行きましょう。いい加減休憩しないと」
「…ん。そうだね。これ以上シンを待たせるのも悪いしね」
そう言いながら片付けをするキラさんを俺も手伝った。
……アスランさんはいつの間にかいなくなっていた。
「キラさん、何食べるんですか?」
「んー……何にしようかなぁ?」
食堂へ向かうまで二人で昼食のメニューについて話したりしながら歩いていた。
そこまでは良かった。食堂へたどりつくまでは。
「キラ!」
食堂についた途端、嫌な人をみつけてしまった。
「アスラン。アスランも今からお昼ご飯食べるの?」
「あぁ。奇遇だな、キラ……シンも」
まるで偶然一緒になったような言い方をするアスランさん。
……偶然なわけないだろ。確実に狙ってこの時間に来たんだろ。
「アスランさん、仕事は終わったんですか?」
「まぁな」
「そうですか。俺たちはあっちで食べるんで失礼します」
食堂の奥の方を指差しながら言う俺にアスランさんはニヤリと笑った。
「ここで食べればいいじゃないか。なぁ、キラ?」
「いいえ、結構です。俺たちはあっちで食べるんで遠慮させてもらいます。では失礼します。…キラさん、行きましょう」
キラさんの手をつかんでアスランさんから離れる。
キラさんは不思議そうに俺とアスランさんを交互に見ていた。
キラさんは危なっかしくて放っておけない。
アスランさんはキラさんに何するかわからなくて、俺はキラさんから目が放せない。
キラさんは誰にも渡さない。アスランさんになんて負けてたまるか!
「ねぇ、シン。アスランとシンって仲悪いの?」
「俺とアスランさんはライバルなんですよ」
「ふーん……よくわかんないよ、僕」
-end.
後書き。
何だよ、これ。終わり方が微妙過ぎなうえに、内容も微妙ーだ。
ごめんよ、りまっち。私、駄文しか書けないの!(泣)
お礼になってないよね……本当に申し訳ない。
こんなどうしようもないヤツですが、これからも仲良くしてやってください…
2005/ 6/25