特別な日を特別な貴方と。
8月8日。
イザークと出会うまでは今日という日をこんなに大切に思うことはなかったはず。
昨日までずっと誕生日プレゼントは何がいいか悩みに悩んで。
どうしてもイザークの欲しいものがわからなくて、ディアッカに相談してみたら思わぬ答えが返ってきた。
「キラ」
「え。僕?」
「そう、キラ。イザークはキラが祝ってくれるなら何でも喜ぶと思うぞ」
「でもせっかくの誕生日なんだから、何かしたいんだよね」
「思いっきり甘えてあげればいいんじゃない?」
突然、聞き慣れた声がした。思わず声がした方向へ振り向く。
「あ、シホちゃん。お疲れさまー。休憩?」
「そう。どこかの誰かがサボるから遅くなっちゃったけど」ディアッカを冷たい視線でチラリと見ながら言うシホちゃん。
「…う。わかったよ。戻ればいいんだろ、戻れば!」
「はい」
面倒くさそうに席を立ったディアッカは僕に向かって困ったような笑顔を見せる。
「頑張れよ、キラ」
「うん。ディアッカも仕事サボらないで頑張ってね」
「はいはい」
ヒラヒラと手を振りながらディアッカは去って行った。
「……まったく」
「あ、ディアッカのこと悪く思わないであげて。僕が相談にのってって頼んじゃったからなんだ」
ため息混じりに言うシホちゃんに慌てて理由を話した。
シホちゃんは微笑みながら今までディアッカが座っていたところに座る。
「あの人はサボり癖があるだけ。キラが気にすることないわ」
「サボり癖……それは否定出来ないかも」
クスクスと笑い合う。
僕にとってシホちゃんはお姉ちゃんみたいな存在で、ディアッカはお兄ちゃんみたいな存在だったりする。
何でも相談にのってくれるし、すごく可愛がってもらってると思うし。
二人ともとても頼りになる存在なんだ。
「……キラに甘えられたら隊長も幸せなんじゃないかしら」
「そうかなー?甘える……かぁ。恥ずかしいかも」
「隊長が欲しがるようなプレゼントをあげたいんでしょ?」
「う、うん」
「じゃあ、頑張って。きっと隊長、すごく喜ぶから」
今、僕が出来る精一杯のこと。
……喜んでくれたら嬉しいな。
「おはよう、キラ」
毎日、イザークのその一言で一日が始まるのを幸せに思う。
「おはよう、イザーク」
――作戦、開始。
「……キラ、いつまでこのままでいるつもりだ?」
「今日はずっとこのままでいたいんだ」
「どうかしたのか?」
「どうもしないよ。イザークはこうしてるの、嫌なの?」
「いや…ただ、珍しいと思っただけだ」
イザークに抱きついたまま動こうとしない僕。
そんな僕の髪の毛をいじるイザーク。
今日は僕もイザークもお休み。
だから、ベッドの上でどんなにゆっくりしてても平気。
実は甘えるってどういうことなのか、はっきりとはわからない。
これであってるのかな?
イザークは喜んでくれてるのかな?
不安になってイザークの顔を見上げてみる。
するとそこには……。
「……っ!」
「おい、キラ?一体今日はどうしたんだ?さっきから変だ」
急にイザークの胸に顔をすり寄せた僕に優しく声をかけるイザーク。
――だって。
そんな顔ズルイよ。……そんな、綺麗で優しい笑顔。
僕がイザークを祝いたいのに、まるで逆の立場な気さえしてしまう。
何故か恥ずかしいような気になって、見ていられなくてイザークの胸に顔をすり寄せた。
「今日のキラはずいぶんと甘えん坊なんだな」
「……だって、それがいいって言うから。こんな僕は嫌い?」
僕がそう言った途端ため息をつくイザーク。
顔を見ていないから確かではないけど、イザークは今きっと困ったように微笑んでる。
そんな気配がした。
「まったく誰から聞いたんだ、そんなこと」
「ディアッカとシホちゃん」
「……俺がこんなキラを嫌いだと思うか?」
こんな風に質問を質問で返すのもズルイ。……答えるのが怖い。
嫌い?
嫌いじゃない?
それとも
好き?
「思い上がってもいいなら答えてもいいよ」
「構わないが?」
「じゃあ……こんな僕も好きでいて?」
「それが答えか?」
「うん。答えになってない?」
「いや」
そう言うとイザークは思わぬ行動に出た。
恥ずかしくて目を合わせないようにぎゅっとくっついていた僕を簡単に剥がしてしまった。
視線が逸らせないように顔をイザークの両手で固定されてしまう。
そして、綺麗なアイスブルーの瞳と視線が交じり合う。
「答えなど最初から出ている。俺がお前を嫌いになるはずないだろう?」
「イザーク……」
「俺はお前に出来る限りの愛を与えているつもりだが?わからないというのなら今まで以上に与えるまでだ」
いつの間にかイザークが僕に覆いかぶさっていた。
……やっぱり、立場が逆転してしまっている気がしてならない。
「今日は何の日か知っているな?」
「うん。誕生日おめでとう、イザーク」
「ありがとう。プレゼントとしてお前をもらう。異存は無いな?」
「……最初からそのつもりだもん」
「そうか」
クスクス笑うイザークと、多分顔が林檎のように赤い僕。
――貴方の誕生日だから、貴方の思うがままに。
貴方がこの世界に生まれてきたことを何よりも嬉しく思う。
そんな記念すべき日に貴方の隣にいられることを幸せに思う。
誕生日おめでとう、イザーク。
これからもイザークはイザークのままでいてね。
……僕はイザークがずっとずっと大好きです。
-end.
後書き。
イザークお誕生日おめでとう!ということで記念ssです。
なんだか健気っぽいキラ。ジュール隊はみんな仲良しさんです。キラのこと可愛がりまくり。
かなり俺様度満点チックで恥ずかしいことをサラッといってしまうイザーク。……書いてて私が恥ずかしかったり(笑)
意味不明度だけは満点ですが、ギリギリ前日にアップしてみましたっっ!(汗)
8月8日〜9月8日まで期間限定ですがフリー配布ということでお持ち帰り自由です。
サイトをお持ちの方でこんな駄文でも「飾ってやるよ!」という方はどうぞ。フリー配布ssについて→
2005/ 8/ 7