夢の中の君に告ぐ



「キラ?」
「もう…なぁに〜?」
「さっきから寝るなって言ってるだろ?」
キラは今アスランに後ろから抱きしめられるようにして座っている。
「だって眠くなってきちゃったんだもん」
「お前なぁ…今、俺が何してるかわかってるのか?」
「う…ん。わかってるー」

部屋の中はとても静かで、パチンパチンという音と二人の話し声しか聞こえない。
キラはアスランに爪を切ってもらっている最中。
抱きしめられながら爪を切ってもらっているうちに眠くなってしまった。
徐々に襲ってくる睡魔にだんだんと勝てなくなってしまったキラは、もう半分以上眠ってしまっている。

「キーラ?寝ちゃ駄目だって。もう終わるから」
「はぁ…い。わかりまし……た」
もうキラは寝る寸前のようだ。このままだと確実に寝てしまう。
「キラ終わったぞ……キラ?」
「ぁー…い。ぼく…ねてま……せん」
「寝るならちゃんとベッドで寝ろよ?」
「ふぁーい……」

ついに寝てしまったようだ。もう寝息が聞こえ始めている。
「…まったく。俺はベッドじゃないんだぞ?」
そう言うアスランはとても穏やかな表情で。
アスランは自分の腕の中で眠ってしまったキラを大事そうに抱きかかえながらベッドまで運んで寝かせてやる。

しばらくとても幸せそうに寝ているキラの寝顔を見ていたアスランは静かにクスクス笑いながらぽつりと言う。
「相変わらず可愛い寝顔だな…昔から変わってないよ」
「ん……アスラ…ン」
急に名前を呼ばれ起こしてしまったかと確認するアスラン。
「…寝言、か」
アスランの名前を呼んだキラの顔は惚れ直すほどの綺麗な笑顔で。
眠っているとはわかっていてもひとつ聞いてみたくなった。
「ねぇ。キラはどんな夢を見ているの?俺の名前呼んでくれたってことは俺の夢?…そうだったら嬉しいなぁ」
そう言って微笑むアスラン。
その笑顔はきっとキラにしか見せない表情。キラといると自然と出てくる表情。

アスランはこれ以上キラの安眠を邪魔するのは悪いと立ち上がってベッドから離れようとした。
その瞬間、何かに引っ張られたような気がした。
驚いて振り向いてみると、アスランの服のすそをキラの手がつかんでいた。
そんなに強い力ではないから、すぐに離せそうだった。
でもアスランは離そうとはせずに、またキラの眠るベッドの上に座る。

『行かないで』と言われたわけではないのにここから動けない。

――動きたくない。

「俺にここにいて欲しいのか?キラがそう願うのなら、いつまでもずーっとここにいてあげるよ」
言いながらアスランはキラの頭を撫でる。
「…大丈夫。俺はキラのそばにずっといるよ」


夢の中の君に告ぐ。

君が望む限りいつまでも何があってもそばにいるよ。
もう君をひとりぼっちになんて絶対させないから。

――それだけは誓うよ。


だから安心して眠るといい。

ずっとここに、君の隣にいるから。


-end.



後書き。
甘め(?)アスキラ。
アスキラはあまり甘めなのが無いようなので書いてみました。




2004/11/24
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